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モバイルガジェットのルーツを振り返る②「カメラ機能搭載の原点と進化の歴史」

モバイルガジェットのルーツを振り返る② 「カメラ機能搭載の原点と進化の歴史」
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スマホになくてはならない重要なものにカメラ機能が挙げられます。

カメラが付いていなかったら静止画や動画の撮影はおろか、QRコードの読み取りもできません。昨今は各種申請等で証明書等をスマホで撮影して本人確認するといったシーンも多くなってきました。もはやカメラが無かったらスマホの日常使用に大きな支障を来します。

全世界で当たり前に使われるようになったスマホのカメラ機能ですが、じつはこれ、日本で生まれて世界に拡がった機能だったってご存じでしたか?!

目次

もはや無くてはならないスマホのカメラ機能

スマホカメラで自撮りをする様子

スマホにはディスプレイ側に自撮り用の「インカメラ」も備えられており、こんなふうにみんなで自撮り記念撮影なんて日常のことになりましたね。いつでも持ち歩いているスマホだからこそ、思い立った時に撮影可能なカメラ機能との相性って抜群ですね。

こんなプライベートシーンだけでなく、もはやビジネスの世界でもスマホのカメラ機能に頼り切りといえます。たとえばスマホのカメラ機能は報道の在り方も変えてきました。

記者会見でスマホを使う記者達

たとえば記者会見のフォットセッションではご覧のとおりスマホで撮影をしている記者がじつに多いこと!

報道のプロフェッショナルでも、このようなシチュエーションでスマホのカメラを多用しています。スマホのカメラ機能でも、本格的な一眼レフカメラに匹敵するクオリティで撮影が可能となってきました。機動性を考えればむしろいつでも持ち歩き、思い立った時に撮影できるスマホのカメラ機能は報道の在り方さえも変えてきたと言って過言ではありません。

たとえば、プロの報道関係者でなくとも今や誰もが報道カメラマンの代わりを果たせる時代となりました。大手メディアでは、事件や事故の報道に使用可能な画像・動画素材の提供をいつでも受け付けています。よくニュース番組などで「視聴者提供」とテロップが付いた映像が流れることがありますが、たまたま事件や事故のその場に居合わせた人が撮影した映像が、SNSや報道番組で注目を集めることは珍しくありません。世界に目を向ければ、ウクライナとロシアの戦争報道でもスマホが大活躍しているシーンをたくさん見かけましたね。

カメラ機能付きのケータイは日本が発祥

今や世界で販売されているあらゆるスマホにはカメラ機能が備え付けられていることが当たり前、動画や静止画を撮影するツールとしては単機能のデジタルカメラよりもスマホのカメラ機能を使うほうが日常的ですね。

このカメラ機能を世界に先駆けてケータイに搭載して市販化したのは、じつは日本なのです。

どの端末をカメラ機能初とするかは議論のあるところですが、カメラ自体を備えた最初の端末は、1999年9月に販売開始された、当時のDDIポケット(のちウィルコム→ワイモバイル)から発売されたVP-210型PHS(京セラ製)に行きつきます。

DDIポケット VP-210(1999年9月、京セラ製)
DDIポケット VP-210(1999年9月、京セラ製)

ただし、このVP-210に備えられたカメラは、テレビ電話用として端末前面に備え付けられており、人物や風景などのポートレートを撮影するものではなかったため、カメラ機能初のモデルとは認めないという説もあります

現代のカメラ機能のようにポートレート等を撮影できる端末のルーツとしては、2000年11月に当時のJ-フォン(現ソフトバンク)から発売されたJ-SH04型携帯電話(シャープ製)がその第一号機として歴史に刻まれています。

J-SH04型携帯電話(シャープ製)
J-フォン J-SH04(2000年11月、シャープ製)。背面にカメラが備えられていた

J-SH04の背面にはカメラが搭載され、手軽にスナップ写真が撮影できるというのがウリでした。当時は「プリクラ」(セガの登録商標)などと呼ばれた写真シール印刷機が大ブームとなり、撮影した写真シールを携帯電話の背面に貼っているユーザーもたくさん見かけたものでした。そこにヒントを見出し、携帯電話本体で写真が撮影出来たら便利なのではないかという発想から、J-SH04が生まれたと言われています。

J-SH04の自撮り用ミラー
J-SH04の背面カメラ横には自撮り用ミラーも

J-SH04には縦128×横96ピクセルで撮影可能な11万画素のCMOSセンサー(カメラ)が背面に備え付けられていました。カメラも端末のディスプレイもまだまだ進化途上のもので、何かメモを取るにしても解像度が粗すぎて使い物になるとは思えないものでしたが、その後モデルチェンジするたびにカメラとディスプレイの解像度や色数が進化していきました。

またJ-フォンは2001年夏季より「写真付き写メール」としてメールで送受信できるサービスを提供開始しました。これを追うように2001年から2002年にかけてauは「フォトメール」、NTTドコモは「iショット」として同様のサービスを展開していき、対応端末も次々に増えていって、「撮影した画像をメールで送る」という使い方が瞬く間に社会に浸透していったのでした。

J-SH04でポートレート撮影
J-SH04でポートレート撮影

ちなみに、カメラ内蔵型の携帯電話を発売したJ-フォンに対して、他のキャリアからは携帯電話のコネクタ部に接続可能な外付け型カメラを発売して後追いした時期もありましたが、それらは全くヒットしませんでした。

やはり携帯電話で利用される機能というのは、端末自体に内蔵されなくては結局は持ち歩かれずユーザーに浸透していかないということが証明されたのでした。

外付け型カメラ
J-フォン以外のキャリアは外付けタイプのモバイルカメラを発売したところも

J-SH04を発売した当時のJ-フォンは、同時に「モバイルプリンター」も商品化しました。携帯電話をコネクタ接続し、携帯電話で撮影した画像を写真シールのようにプリントできるというものです。

モバイルプリンター
J-フォンでは撮影した画像をプリントできるモバイルプリンターも発売。しかし、これもヒットには至らず

日本のケータイはカメラ機能の進化でも世界先端を走った

11万画素のカメラからスタートしたケータイのカメラ機能ですが、その後新製品が発売されるたびにカメラ機能が高性能化していきました。

2003年5月には100万画素のカメラを搭載したJ-SH53(J-フォン、シャープ製)、D505i(NTTドコモ、三菱電機製)A5401CA(au、カシオ製)が登場しました。メガピクセル(1メガピクセル=100万画素)というキャッチが世の中に大きなインパクトを与えたものでした。

さらに2003年11月には200万画素へ(D505iS、NTTドコモ、三菱電機製)、2004年6月には300万画素へ(A5406CA、au、カシオ製)、2006年11月には500万画素へ(910SH、ソフトバンク、シャープ製)、2008年11月には800万画素(W63CA、au、カシオ製およびSH-01A、NTTドコモ、シャープ製)へと進化していきました。そして2009年10月に発表されたSH003(au、シャープ製)ではついにコンパクトデジタルカメラに匹敵する1,200万画素のカメラを搭載しました。(※1)

NTTドコモ D505i(2003年11月、三菱電機製)
メガピクセルカメラ搭載初となったNTTドコモ D505i(2003年11月、三菱電機製)
D505iは端末を開くとカメラが自撮り用として使用でき、折りたためばカメラが回転してカメラスタイルに。このギミックが巧みだった

日本がどれだけカメラ機能で世界最先端を走っていたかというのは、iPhoneのカメラスペックと比較するとよく分かります。

2008年7月発売のiPhone 3Gのカメラはなんと200万画素でした。200万画素といえば、日本では2003年11月に登場しています。その後も主要なiPhoneを追いかけると、2011年10月発売のiPhone 4Sで800万画素に(日本では2008年11月に登場)、2015年9月発売のiPhone 6S/6S Plusでついに1,200万画素のカメラが搭載となりました(日本では2009年10月に登場)。(※2)

日本では当時多くの端末メーカーが存在し、激しい販売競争が繰り広げられる中で、搭載されるカメラの画素数はカタログスペックとして分かりやすいものであり、競争の結果先走りすぎていた一面もあるのでしょう。一方でiPhoneは実用性を重視し、端末発売のタイミングで本当に使いやすいスペックであることを重視しているものと思われます。

ちなみに2016年7月に公開された映画『シン・ゴジラ』では、さまざまなシーンでiPhoneで撮影された映像が使われていることで話題になりました。(※3)

スマホカメラの進化を疑似的に比較できるサイト

スマホカメラのスペックについて検索していく中で、2000年11月発売のJ-フォン「J-SH04」から近年発売のスマホに至るまでの主要機種におけるカメラの進化を比較できるサイトを発見しました。製品購入ガイドなどの情報を発信しているSIMPLE GHARという会社が提供する「The Evolution of Camera Phones, Visualized」というオンラインサービスです。(※4)

J-SH04のほか、iPhoneやGoogle Pixcelなど、さまざまな機種のカメラの画質を疑似的に再現し、比較することができます。20数年でどれほどカメラ機能のスペックが進化したのかが一目瞭然です。

J-SH04(2000年)とGalaxy S22 Ultra 5G(2022)の撮影画像
J-SH04(2000年)とGalaxy S22 Ultra 5G(2022)の撮影画像を比較するとこんな感じらしい

進化はどこまで続く?

ケータイやスマホで撮影した画像や動画は、メールやSNSを通じて送受信していると思います。スマホを利用するにはネットワークが必要ですが、カメラ機能の進化はモバイルネットワークの進化と共に歩んできたともいえます。

カメラ機能搭載のルーツといえるJ-SH04で利用できたモバイルネットワークは2G(第2世代)と呼ばれるものでした。モバイルネットワークはおよそ10年程度のスパンで次世代ネットワークにバトンタッチしていきます。3G(第3世代)ではメガピクセルクラスのカメラで撮影した静止画のやり取りが日常化していった時代でした。さらに4G(第4世代)では動画の送受信も一般化し、現代の5G(第5世代)においてはもはや動画を使ったコンテンツの視聴が一般化したという進化をたどっています。

ネットワークは今後もさらに進化を続けていきます。6G、7Gといったネットワークが登場する頃にはスマホがどのように進化し、私たちの生活を一変させていくのか、本当に楽しみですね。

参考

※1 平賀督基:ケータイカメラ進化論 画素数競争とケータイカメラの進化, ITmedia Mobile, 2010年4月,
https://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/1004/21/news003.html

※2 ソフトバンク:[iPhone]カメラの画素数はどのくらいですか?,
https://www.softbank.jp/support/faq/view/11825

※3 栗原亮:映画「シン・ゴジラ」、iPhone撮影の舞台裏●iPhoneカメラの創造力, Mac Fan Portal, 2016年7月,
https://macfan.book.mynavi.jp/article/m54115/

※4 SIMPLE GHAR:hThe Evolution of Camera Phones, Visualized, 2022年8月,
https://simpleghar.com/the-evolution-of-camera-phones-visualized/

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