2024年12月26日、スマートフォンの割引規制について定められている「電気通信事業法」第27条の3などのガイドラインが総務省によって改正されました。
以下、一覧となります。
1.買取等予想価格の算出
買取等予想価格の算出は一般社団法人「リュースモバイル・ジャパン」のWebサイトに公表されている買取平均額を使用すること。
2.ミリ波対応端末の割引上限緩和
ミリ波対応端末の割引上限を現行の4万円(税抜)から5万5千円(税抜)へ変更。
3.不良在庫割引
最終調達経過日数に応じて割引。
4.お試し割
新規(乗り換え含む)契約者に対して6カ月間、上限2万円(税抜)の割引を容認。
本記事では上記の内容を徹底的にわかりやすく解説していきます。
※2025年1月7日時点の最新情報です。
筆者プロフィール
吉田裕紀
東京都を中心に店舗を構える「スマホ相談窓口『TOP1』」の運営会社、株式会社ディ・ポップス所属。11年間の現場経験から学んだことを記事作りに活かしている。格安SIM系の記事を得意としているライター。
東京都青梅市在住。
ITmedia Mobile 寄稿記事一覧
買取等予想価格の算出方法の変化
大手通信キャリアが提供している「買い替えプログラム」。
これは端末を分割払いで契約し、一定期間(1年後・2年後など)後に端末をキャリアに返却すると残りの分割支払金が免除されるプログラム(サービス)です。買い替えプログラムを利用することにより端末支払いの負担を下げてスマホを契約することができます。
この免除される分割支払金のことを「残価」とも言いますが、残価とは将来(1年後・2年後など)、端末を中古市場などで買い取ってもらう際の価格(買い取り価格)にあたりますが、この残価に関しては各社によってある程度自由に設定されていました。
残価=免除される分割支払金=買い取り価格
例えばソフトバンクから販売されている「Google Pixel 9」(128GB)を例にとってみましょう。この機種は家電量販店などの携帯売り場でも目玉商品として扱われてきたスマートフォンです。
2024年12月26日より前のGoogle Pixel 9(128GB)の販売価格は110,160円(税込)。これに対してソフトバンクが設定した残価(免除される分割支払金)は110,136円(税込)
(2年後に端末を返却した際)実際に契約者が支払う端末価格は110,160ー110,136=24円。毎月の支払い額に換算すると1円になります。
上記画像は当サイトフォンシェルジュ提携店舗「TOP1」におけるGoogle Pixel 9(128GB)の2024年12月25日以前における販売価格(本体代金)や実質負担額を表しているものですが、ソフトバンクのオンラインショップでも同じ条件でした。
実質負担額が24円で済んだのは、残価(免除される分割支払金)に関してはキャリアであるソフトバンクがある程度自由に決めることができたため。その結果「キャリアによって意図的に残価(免除される分割支払金)を高くする」→「契約者の支払い負担額を下げる」という手法が取れたのです。
買い取り価格はRMJの実績値を参照
しかし2024年12月26日以降、法改正により買い取り価格(残価)は一般社団法人「リュースモバイルジャパン(RMJ)」のサイトから公表される買い取り平均額を参照して決定することがキャリアに義務付けられました。
リュースモバイルジャパン(RMJ)とは「GEO」や「BOOKOFF」などの中古買い取り業者が会員となっている組織です。
端末の買い取り平均額はリュースモバイルジャパン(RMJ)のホームページから確認することができ、平均額に抽出されているランク品は未使用品と破損品を除く全てのものです。
この記事を執筆している2025年1月7日時点でリュースモバイルジャパン(RMJ)が公表している買い取り平均額は2018年1月~2024年6月迄を対象として抽出・集計したデータのもののみ。
なので2024年8月22日に発売されたGoogle Pixel 9の買い取り平均額はデータに載っていないようですが、参考としてGEOの買い取り額を見てみると、57,200円〜71,500円(2025年1月7日時点)となっているようです。
2年後のGoogle Pixel 9(128GB)の買い取り価格は今の57,200円〜71,500円よりは低くなっているでしょう。
GEOの買い取り額と比較してみると、ソフトバンクが2024年12月25日以前に設定したGoogle Pixel 9(128GB)の残価(免除される分割支払金)110,136円(税込)は明らかに高すぎるということが言えます。
「実質24円」はどうなった?
リュースモバイルジャパン(RMJ)の平均買取額推移にはGoogle Pixel 9の平均買い取り平均額はまだ載っていませんが、2025年1月7日時点のソフトバンクオンラインショップにおけるGoogle Pixel 9(128GB)の販売価格や支払い総額を見てみましょう。
まず販売価格が110,160円(税込)から151,200円(税込)に上がっていますね。
そして「支払い総額」を見てみるとその金額は36,180円(税込)。「実質24円」からは程遠い額になっており、毎月1円で持つことができなくなりました。
この支払い総額36,180円(税込)は1年後にGoogle Pixel 9(128GB)を返却した場合の金額ですが、これとは別にあんしん保証パックの月額990円(税込)の13カ月分である12,870円(税込)の支払いも必要になってきます。
つまり36,180円+12,870円=49,050円(税込)が、Google Pixel 9(128GB)を1年で返却した時の実質負担額ということになります。
(2025年1月7日時点)
2025年1月7日現在、Google Pixel 9(128GB)で過去に実施されていた「実質24円」の販売手法は無くなったと言えます。
iPhoneの場合
ここまではAndroidであるGoogle Pixel 9を例として解説してきましたが、日本国内でも人気があるiPhoneだとどうなのか?
気になる方も多いと思いますが、iPhone SE(第3世代)やiPhone 14など2年以上前のモデルであれば、「実質24円」が残っています。
以下の画像はソフトバンクオンラインショップにて他社から乗り換えで機種を購入し、2年後に返却した場合の料金シミュレーションですが、支払い額が実質24円であることが見て取れるかと思います(2025年1月7日時点)。
買い取り価格(残価)は一般社団法人リュースモバイルジャパン(RMJ)から公表される買い取り平均額を参照して決定することが義務付けられるようになりましたが、その影響を大きく受けるのは従来安く販売されていたAndroidであるということが言えそうです。
よって安くスマートフォンを購入したい方にはiPhoneがおすすめです。
影響を受けないケース
買い取り価格(残価)がリュースモバイルジャパン(RMJ)の買い取り平均額から算出する方法から影響を受けないものとしては、「一括払いで契約」した場合です。
そもそも機種を一括払いで購入する方は、数年後に機種をキャリアに返却せず使い続けようと考えている方です。
そうなると残価の額などはもはや関係ありませんので、今回の法改正の影響を受けないということになります。
ミリ波対応端末値引き上限アップ
2023年12月27日に改正された電気通信事業法第27条の3などのガイドラインでは端末の値引き額の上限は4万円(税抜)に制限されました。
しかし今回の改正では「ミリ波対応端末に限っては」その上限が4万円(税抜)から5万5千円(税抜)まで引き上げられています。
ミリ波対応端末の「ミリ波」とは?
高速大容量通信に適した周波数が高い「マイクロ波」に属する周波数。日本国内では28GHz帯が活用されている。
高速大容量通信に適したミリ波ですが、その高い周波数故に障害物に弱くつながりにくいというデメリットを持ちます。
さらに2025年1月現在ではミリ波に対応した端末の数は、Galaxy Z Fold5、Galaxy S24 Ultra、Xperia 1 VIなどの高額機種ばかり。ちなみに日本国内で販売されているiPhoneはこのミリ波に対応していません。
ミリ波対応端末と価格の例
(2025年1月7日時点)
Galaxy S24 Ultra 256GB
218,460円
(ドコモオンラインショップ)
Xperia 1 VI 256GB
214,800円
(auオンラインショップ)
なのでミリ波対応端末値引き上限アップに関しては、そこまで得にはならなそうです。
不良在庫割引 半額〜対照価格相当額まで
不良在庫割引とはメーカーから調達(仕入れ)した端末で売れ残ったものに対して適用される割引です。
最終調達日 | 利益提供額上限 (割引できる額) |
---|---|
12カ月 | 対照価格の半額まで |
24カ月 | 対照価格の8割まで |
36カ月 | 対照価格相当額 |
ただしこの不良在庫割引は、各社の買い替えプログラムと併用することはできません。
ドコモ
いつでもカエドキプログラム
au
スマホトクするプログラム
ソフトバンク
新トクするサポート
(スタンダード/バリュー/プレミアム)
楽天モバイル
楽天モバイル買い替え超トクプログラム
お試し割 上限20,000円まで割引(SIMのみ)
お試し割とは新規・乗り換えでSIMのみを契約した場合に受けられる割引で以下の特徴を持ちます。
- 上限20,000円(税抜)まで割引
- 期間は6カ月
- 1名義1回線まで
- SIMのみ契約限定
ただし従来から「SIMのみ利益提供上限20,000円」は認められてきましたが、今回のお試し割はこの利益提供上限20,000円に含まれています。
つまりお試し割とは別にポイント還元などのキャンペーンに充てる利益はほとんどないとも言えます。
現時点ではそこまで影響はない?
以上、今回は2024年12月26日に改正された電気通信事業法第27条の3などのガイドラインについて解説してきました。
これまでGoogle Pixel 9などのAndroid端末を目当てに機種を購入してきた方にとっては少なからず影響(問題)が出てくる可能性がありますが、それ以外の方にとっては今回の改正についてはそこまで気にする必要はなさそうです。
強いて言うならば、今後不良在庫割引がどれほどのものになるかといったところでしょうか。調達から36カ月経過すれば割引は最大となりますので。
今後の各社の動向に注目していきたいところですね。